2022年8月19日送分。
「ウクライナの『核の盾』は眼中になし。"次世代原発が経済安全保障のカギ"と言う原子力村の本音とは?」
11年前の東京電力・福島第一原子力発電所の教訓は、すっかり風化してしまったのでしょうか。官民に広がる"原子力ムラ"と称される人々が、今、とんでもないことを始めようとしています。
お盆に休みに入る直前の8月9日に、ムラの旗振り役である経済産業省が大臣の諮問機関である審議会を開きました。そこで、歴代の政権の原子力政策の方針を180度転換する原子力の技術開発・実用化の工程表をまとめたんです。その中には、次世代原発の開発や建設、リプレース(建て替え)を急ぎ、そのトップ・バッターである「革新軽水炉」という名の「改良型の軽水炉」の商業運転を2030年代に実現すると明記してあるのです。そして、岸田総理が国策として掲げたGX(グリーントランスフォーメーション)の目玉の一つにして財政資金を投入させようと動き出したところなのです。
僕が呆れたのは、工程表が、こうした原発の開発や建設、運転が、「既存の技術や国内のサプライチェーンを利用してできるので、エネルギー分野の経済安全保障の強化に役立つ」と強調している点です。皆さんに思い起こしてほしいのは、ロシア軍が、ヨーロッパ最大級の原発を占拠して、ここに兵を置いたり、武器を貯蔵したりする戦略拠点にしている問題です。ウクライナ軍が攻撃しにくい点に付け込んだ、いわゆる「核の盾」ですよね。IAEA(国際原子力機関)をはじめ、国際社会がこの問題を猛烈に憂慮していることは周知の事実です。つまり、これからは原発を保有すること自体が、安全保障上の大きなリスクになりかねないんです。それなのに、原子力村の人々はその大きなリスクを無視して、『新たな原発を開発、建設、運転することが経済安全保障に役立つ』と一方的に主張しているのです。
ということで、今日は、この原子力村の人々の工程表という名前の政策提言の実態をしっかり考えたいと思います。
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