男女がいくら愛し合っても、幸福な家庭を完成させるには、必ず家庭の囲いとなる父母がいて、大切にする子供がいなければなりません。家庭という囲いがしっかりしているとき、その家庭は初めて幸福になります。いくら大きな社会的成功を収めたとしても、家庭の囲いが崩れてしまえば不幸になってしまいます。
愛の土台となるのは、お互いがお互いのためにすべてのものを捧げる犠牲の心です。父母の愛が真の愛であるのは、持っているものをすべて与えても、もっと与えたいと思う愛だからです。子供を愛する父母は、与えたことを覚えていません。「おまえには、何月何日にゴム靴を買ってやり、服も買ってやった。おまえのためにこれまでさんざん苦労したが、その代価はいくらだ」と帳簿に書いておく父母は一人もいません。かえって、自分が持っているものをすべて与えても、「これ以上与えることができなくて本当に済まない」と言うのが父母です。
幼い頃、養蜂をしていた父に付いて回り、ミツバチが遊ぶ様子をたくさん見ました。花畑を飛び回っていたミツバチが蜜の匂いを嗅ぐと、花びらにしっかりと足をつけ、尻尾を後ろにしたまま口を雄しべと雌しべに差して蜜を吸います。その時、ミツバチに近づいて、尻尾をつまんで引き抜いても蜜から離れません。命がけです蜜を守るのです。
家庭を持って暮らす父母の愛はまさにこのミツバチと同じです。自分の命が尽きても、子供に対する愛の紐を放しません。子供のために命を捨て、さらには命を捨てたことさえ忘れるのが父母の真の愛です。いくら道が険しくても、父母は喜んでその道を行きます。父母の愛は、世の中でも最も偉大な愛です。
いくら良い家で山海の珍味を食べて暮らしても、父母がいなければ心ががらんと空いてしまいます。父母の愛を受けられずに育った人の心の中には、他のどんなものでも満たすことのできない孤独と寂しさが隠れています。家庭は父母の真の愛を受けて愛を学ぶ所です。幼少期に愛されなかった子供たちは、生涯愛に飢え、、情緒的な苦痛を受けるだけでなく、家庭や社会のために当然すべきことがあるという高い道徳的な義務を学ぶ機会を失ってしまいます。その意味で、真の愛は、家庭以外の他の場所では決して学ぶことができない価値だといえます。
真の家庭は、夫と妻、父母と子女、兄弟姉妹がお互いに為に生きて愛する所です。さらには、夫は妻を神様のように愛し、妻は夫を神様のように尊敬する所です。夫は父の代身であり兄の代身なので、血のつながった父を捨てることができず、また兄を捨てることができないように、夫を捨てることはできないのです。妻もやはり同じです。ですから、「離婚」という言葉はあり得ません。このようにお互いを絶対的な存在として暮らす所が、真実の愛にあふれた真の家庭です。
お互いに異なる人種と文化的背景を持つ夫婦だとしても、神様の愛を受けて家庭を持ったのなら、彼らの間に生まれた子供たちの間で文化的葛藤というものはあり得ません。その子供たちは、父母を愛する心で母の国と父の国の文化と伝統をすべて愛して大切にするのです。したがって、多文化家庭の葛藤の解決は、どのような知識を教えるかではなく、その父母が真の愛で子供を愛するかどうかにかかっています。父母の愛は、子供の肉と骨の中に露のように入り込んで、母の国と父の国を一つのものとして受け入れさせ、子供が立派な世界人として育つようにする肥料となります。
家庭というのは、人類愛を学び教える学校です。父母の温かい愛を受けて育った子供は、外に出ていけば、家で学んだとおりに、困っている人を愛の心で助けるでしょう。また、兄弟姉妹の間で情け深い愛を分かち合って育った子供は、社会に出て隣人と厚い情を分かち合って生きていくでしょう。愛で養育された人は、世の中のどんな人でも家族のように思うものです。自分の家族のように思って人に仕え、人に自分のものを分けてあげる愛の心は、真の家庭から始まります。
家庭が大切なのには、もう一つ理由があります。家庭は世界に拡大するから大切なのです。真の家庭は、真の社会、真の国家、真の世界の始まりであり、平和世界、神の国の出発点です。父母は、息子・娘のために骨が溶けてなくなるほど働きます。しかし、単純に自分の子供にばかり食べさせようと働くのではありません。あふれるほど愛を受けた人は、人のために、神様のために働くことができます。
家庭は、あふれるほど愛を与え、また与える所です。家庭は、家族を包む囲いであって、愛を閉じ込める所ではありません。かえって家庭の愛は、外にあふれ出て、絶えず流れていかなければなりません。いくら愛があふれ出ても、家庭の愛は渇くことがありません。神様から受けたものだからです。神様から与えられた愛は、いくら掘り出しても底が見えない愛、いや掘れば掘るほどもっと澄んだ泉があふれ出てくる、そのような愛です。その愛を受けて育った人は、誰でも真の人生を生きることができるのです。
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