復帰摂理を概観すれば、母子協助の基盤が重要でした。ヤコブのとき、モーセのとき、イエス様のとき、すべてそうでした。堕落の張本人であるエバに代わって責任をもつ母を立て、次子と母子協助をしながら、サタンの血統と生命を分立しようとする摂理が行われてきたからです。
神様は、堕落によって人類を先に占有したサタンと血縁的に直結した長子に、直接相対することはできません。神様は善の側を代表する次子を相対として条件を立てさせ、悪の側を代表する長子を屈服させることによって、善の血統を復帰してこられたのです。
人類の堕落は、アダム、エバ、天使長の三存在によって引き起こされました。天使長がエバを誘惑して霊的堕落をし、その次に堕落したエバがアダムを誘惑して肉的堕落をすることにより、神様に背いたのです。堕落した天使長はサタンになりました。したがって、救援摂理は復帰摂理であり、復帰の原則は一八〇度、反対の道を通して行われるのです。
真の愛と生命の種をもったアダムを失った神様は、サタンの讒訴条件がない新しい種をもった息子を探し立てなければなりません。創造のとき、アダムを先に造ったように、再創造摂理である復帰摂理も、堕落とは無関係の息子を先に立てなければならないのです。これがメシヤ思想の根本です。この地に神様の愛と生命の種をもって生まれる息子のために、まず母がいなければなりません。母が息子を生むとしても、ただそのまま生むことはできないのです。必ず、復帰の公式を通して生まなければなりません。
復帰摂理の中に現れた母子協助はすべて、天の息子がサタンの讒訴を抜け出した新しい生命の種をもって着地するための準備であり、条件なのです。母子が共にサタンの攻撃を免れる条件を立てた土台の上に、サタンを代表する長子を屈服させることにより、サタンが先に占有した愛と生命と血統を復帰してきたのです。
神様の摂理歴史を記録した聖書の中に、理解できない記録が多くあります。リベカは夫イサクと長子エサウをだまし、次子ヤコブを助けて、彼が祝福を受けるようにしました。
神様は、一見不当に見える方法を動員したその母子の側に立たれ、彼らに祝福を与え続けました。アダム家庭では、カインとアベルの兄弟が母の胎の外で争って、次子アベルが命を失いました。ヤコブはアベル以後、善の側に立った多くの人々の犠牲と蕩減条件の基台の上に立ったので、先に占有したサタンにさらに追いついて、双子の兄であるエサウを相手にするようになったのです。
結果的に、ヤコブはヤボク川のほとりで天使を屈服させる霊的勝利の条件と実体の天使長の立場であるエサウを屈服させることにより、歴史始まって以来、初めて勝利したというイスラエルの祝福を受けるようになりました。しかし、そのときは既に、年が四十代でした。
サタンの偽りの愛の種がエバの胎中に蒔かれて悪の生命が生まれたので、神様は母の胎中まで入っていって分別しなければ、天の息子が胎中から誕生できなかったのです。ですから、ヤコブの勝利によっても、いまだ分別されていない妊娠から四十代までの期間も、サタンが分立されなければなりませんでした。
結果的にこの責任を引き受けた偉大な母が、タマルでした。タマルはユダの長男エルと結婚しましたが、エルは神様にふさわしい人ではなく、死んでしまいました。当時の慣例に従い、ユダは次子オナンをタマルに与え、子を生ませようとしましたが、オナンは生まれる赤ん坊が自分のものにならないことを知り、精を地に流しました。これが神様のみ前に罪となり、オナンも死んでしまいました。
タマルはユダの三番目の息子シラと一緒になろうとしましたが、ユダはシラをタマルに与えませんでした。タマルによって二人の息子が死んだと考えたユダは、シラまで死んで、家系が途絶えることを心配したからです。
タマルは、選民の血統を継がなければならないという一念で、売春婦に偽装し、義父であるユダを迎え、双子の赤ん坊を身ごもりました。そして、その赤ん坊が生まれるとき、先に手を突き出して出てこようとした長子の赤ん坊が再び腹中に入り、弟になるべき次子の赤ん坊が兄となって先に生まれたのですが、彼がペレヅでした。
そうして、タマルの胎中で長子と次子が争い、分立される胎中復帰が成し遂げられたのです。このような条件の上に、選民の血族を集め、二千年後にローマ帝国の国家基準に対峙するイスラエルの国家的土台の上に、メシヤを懐胎することができたのです。神様の息子の種が、準備された母の胎中にサタンの讒訴なく定着できるようになった、国家的勝利の土台が造成されたというのです。
このような基盤の上で、聖母マリヤが摂理の主流に登場しました。ヨセフと婚約したマリヤは、自分の体を通してメシヤが生まれるというガブリエル天使長の驚くべきメッセージを受けました。処女の立場で赤ん坊を身ごもれば、死ぬしかないというのが当時の規則でしたが、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」(ルカ一・三八)と言いながら、絶対信仰で神様のみ旨を受け止めたのです。
マリヤは、親族であり、尊敬を受ける祭司ザカリヤの家に相談に行きました。神様はマリヤとザカリヤとエリサベツに、メシヤの誕生を一番先に知らせました。彼らはイエス様によく侍り、神様のみ旨によく従わなければならない重大な使命をもった人たちでした。
ザカリヤ夫婦は、マリヤを自分たちの家にとどまらせました。マリヤはザカリヤ家庭において、イエス様を懐胎しました。歴史始まって以来、初めて神様の息子の種、真の父となるべき種が、準備された母の眙中に、サタンの讒訴条件なく着地したのです。それにより、地上に初めて、神様の初愛を独占できるひとり子が誕生するようになったのです。
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