日付:一九八三年十二月十八日
場所:韓国、ソウル、リトル•エンジェルス芸術会館
行事:第一回「世界平和教授アカデミー世界大会」
尊敬する世界大会議長、「世界平和教授アカデミー」の七十二ヵ国の議長団の皆様、そして韓国の「世界平和教授アカデミー」会員教授の皆様。きょう、この意義深い「世界平和教授アカデミー」世界大会において、これまで私が抱いてきた所信の一端を表明できますことを、誠にうれしく思う次第です。
「世界平和教授アカデミー」の究極の目標きょう、この場に外国から来られた多数の議長団の皆様は、去る十一月末にシカゴで開催された「科学の統一に関する国際会議」を終え、お別れしてからほんの数日もたっていないときに、突然の通達により、それも一週間のうちに集まってくださるように連絡を差し上げたにもかかわらず、六大州から駆けつけてくださいました。既にあった御計画や年末の忙しいスケジユールを取り消され、私の招待に応じてくださったことに対し、心から感謝を捧げます。
常識的には理解し難い招待を受け、難しい条件を乗り越えて集まってこられた皆様の今回の大会が、歴史的なものであり、摂理的な意味があることを、徐々にお分かりになるでしょう。
私は、歴史を収拾し、人類の理想を実現するために、学者たちの研究業績と良心的な決断、そして人類を先導する先駆者的な実践が非常に重要であるということを当初から考えてきました。そうして、一九六八年、困難な教会運営にもかかわらず、「国際文化財団」を創立し、一九七二年から「科学の統一に関する国際会議」を毎年開催してきています。
このような大会は、個人や宗教団体で主催するものではなく、国家主権の後援のもとに開かれなければならないものです。しかし、誰もこの点に関心を向ける人がいないため、最初に思い立った私自身が実践しなければならないという信念で、国際会議を開催したのです。そして、今年は「世界平和教授アカデミー」がここ韓国で創立されて十周年を迎える年でもあります。
今日、人類は数多くの危険を抱えています。その中で最も深刻な問題は、人類が正しい価値観を確立し得ず、思想的な対決と混沌の中で、世界大戦の可能性と核の恐怖に直面しているということです。
このような脅威は、人間の心霊を正しく導いていくべき宗教が本来の責任を果たし得ずにいる間に、様々な政治的、経済的欲求を中心とした体制やグループが、科学的知識を誤用したことにより、より一層加速化されています。このような脅威は、人類文明それ自体を根本から危うくしています。
地域を超越した相互協力と共同研究私は「世界平和教授アカデミー」が、人間の英知を啓発するために一生を捧げて尽力してきた有識者の皆様によって、この危機の時代を転換させ、世界平和の根源を模索する牽引車のような機構になることを願いながら、これを創立したのです。
「世界平和教授アカデミー」の究極の目標は、平和と繁栄のための新しい理念と方法論を研究しようとする勇気ある学者たちの献身的な努力によって、正義と調和と秩序の世界を創造することです。
また、「世界平和教授アカデミー」は、今日の時代において危機意識をもっている学者や指導者に、人類が直面している最も根本的な問題を検討するのに必要な資料を提供しなければならないと思います。
皆様が既に御存じのように、十二回にわたる「科学の統一に関する国際会議」を行ってきたその背後には、容易なことばかりがあったわけではありません。莫大な財政負担は言うまでもなく、このような意義あることをしながらも、多くの嫉妬と誤解と耐え難い迫害も受けました。最近において、皆様をはじめとして、多くの碩学たちが積極的に呼応して、世界が段々と私の動機に理解を一層深めてくださっていることは、私にとっては大きな慰めです。
歴史的に人類は平和を念願してきましたが、この地上には依然として戦争が存続しています。不幸にも強大国や権力者たちは、「平和」という言葉をたびたび誤用してきました。彼らは平和をうんぬんしながらも、実際には内面的にも外面的にも、人々を平和でないものによって苦しめてきました。特に共産主義者たちは、挑発を事としながら、「平和」という言葉を口癖のように使ってきました。このように「平和」という言葉は、多くの場合において、ただ不義を実現する手段として利用されてきたのです。
真の平和は、知識や富、そして社会的な地位や政治的権力のような外的条件によるものではありません。この世では、世界的関心事を公平に判断する絶対的基準がないので、変化していく世界の中で衝突する利害関係に縛られ、真の平和の維持は不可能なのです。真の平和は、ただ真の愛の基盤の上に立ち得るものであり、愛の関係は、人類を一つに結びつける、神様を中心とした絶対価値を理解するときにこそ、体験するのです。
私の考えでは、「世界平和教授アカデミー」はその目指す目標から見て、国際的、汎専門的でなければならず、また未来指向的、実践的知性の機構にならなければならないと思います。今世紀の人類が直面している諸問題を解決するためには、ある一分野だけで、または局地的処方だけでは解決不可能です。国家や地域を超越した相互協力と専門を超越した共同研究が絶対的に要請されているのです。
今日の学問は全般的に専門化されており、その課題もまた広大で、特定の学者やある学問分野のもとだけに一元化することはできません。問題解決のためには、多様な訓練を積んだ専門家たちの協力を通じたアプローチが求められ、そのアプローチもまた、個人的次元ではなく、全体的、宇宙的な均衡を取ってしなければならないので、そのための組織的機構や有効な運営は容易なことではありません。
それのみならず、没価値的な方法論が、学問研究の基準であるように認識されてくる間に、研究の結果が多くの場合において、より大きな上位の目的や善の意志に反して、策略家たちに利用され、人類の悲劇を招きました。このような不条理を解決するために、私は絶対価値を中心テーマとした「科学の統一に関する国際会議」で、その代案を求めようと努力しているのです。
平和実現のための「世界平和教授アカデミー」の実践方法絶対価値はもろもろの価値の基準となるので、すべての学問の中心点になります。もしも専門化された学問が没価値的な方法によってのみ研究され、また人によってその価値基準が異なる場合、人類の本性が願う共同理想を実現する基準は、どこから見いだすことができるのでしょうか。また、人類は真の生き甲斐と価値性の保障をどこから受けることができるのでしょうか。
例えば、自由について考えると価値基準の異なる個人相互間、あるいは社会や国家などの体制相互間においてぶつかり合う矛盾、すなわち自由の陰でもたらされる不公平な犠牲は、どこでその補償を受けることができるというのでしょうか。
善を指向する人類の本性を見ても、絶対善の基準が求められていると言えるでしょう。また世界は次第に一日生活圏に縮小され、地球村を築きつつあり、人類が宗教や人種、国籍を越えて緊密に協力し、調和せずにはいられない歴史的な趨勢から見ても、絶対価値の基準は打ち立てられなければなりません。
世界が抱えている問題を克服するためには、多くの指導者が必要です。私は、「世界平和教授アカデミー」の会員である全世界の教授の皆様が、受動的ではなく能動的な、人類の理想の研究と実現に、積極的に参与してくださることを望んでやみません。ですから、「世界平和教授アカデミー」は、研究のみならず、世界福祉のために実践し、その手本を示す機構とならなければなりません。
この点において、他の様々な学者の集まりとは異なると思います。すべての会員は、学生たちを積極的に支援するだけではなく、社会世論に影響を与え、歴史を引っ張っていかなければならないと思います。
私たちは、非暴力的な態度で、それでいて所信をもって、この時代の最も難しく複雑な哲学的、社会的課題として人類が直面している未解決の問題を解決することに心酔し、献身的でなければなりません。「世界平和教授アカデミー」の目標である平和の実現は、理想と理論の基準においてではなく、実践的方法によって到達される目標です。
私は、「国際文化財団」と「世界平和教授アカデミー」の基盤を通した世界大学連盟の理想を抱いてきました。今や実現する段階となり、六大州に少なくとも七十の総合大学を順次に設立し、高い次元で若い世代を育成、指導するでしょう。大学相互間の交換教授制度、交換学生制度、協同研究などを通して、体系性を帯びた教育により、人類が一つの兄弟となる平和世界の理想を実現しようと思う次第です。
そして、「国際文化財団」のシニア•コンサルタントたちには、絶対価値に立脚した大百科事典の編纂計画を既に発表したところであります。現在、権威ある大百科事典がないわけではありませんが、一貫した価値観に立脚して集大成された新しい大百科事典は、後進のための絶対的な要請なのです。私の考えでは、十年以上の時間が必要だと思いますが、全世界の「世界平和教授アカデミー」の会員たちが動員され、この歴史的な作業が成就されなければならないと思います。
それだけではなく、生活を通した大衆教育のために、世界的な新しい月刊雑誌を一九八五年一月から刊行する予定で、既にその準備作業が始まっています。一千ページ以上の膨大な内容が収録されるこの雑誌は、一度見て投げ棄てるような内容ではなく、生活全般にわたって知性の泉となる指針書であり、生活の教育書になるものと期待しています。
また、良書を大量に出版し、人類社会を底辺から教育する計画を立てました。本の質や内容よりも収益性のほうに焦点を合わせている出版界の現実ゆえに、良い本が出版される機会が少なくなっています。数年間は膨大な出血をしたとしても、今後十年間に最低三千巻の本を出版する予定であり、既にその作業が始まっています。
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