日付:二〇〇一年一月十五日
場所:日本、東京、京王プラザ•インターコンチネンタル•ホテル
行事:「二〇〇一世界言論人会議」(代読)
尊敬する元•現職国家元首、言論界の指導者、そして紳士淑女の皆様。私たちは今や新千年が始まる時代の第一歩を踏み出しました。人類はつい十年前まで、冷戦時代の恐怖の中で暮らしてきました。当時、全世界は、恐るべき破壊力をもつ核の脅威に震えなければなりませんでした。
しかし、今日では、政治、経済、文化など、ほぼすべての分野の障壁が崩れ、世界は一つの地球共同体へと変化しつつあります。私たちは、特に時間と空間を短縮させるマスメディア技術の発展により、人類歴史上、最も幅広い変化を経験しています。過去のいつのときよりも、個人は世界と、世界は個人と、より一層密接な関係をもつようになりました。
例えばインターネットは、皆様もよく御存じのように、ニュースや娯楽情報を得る方法を変化させており、誰でも自分のささいな意見まで全世界に伝達できるようにしてくれます。同様に、世界の重要なアイデアとイシューが、すべての人のコンピューターの画面に映ります。
二十世紀の初めにおける、科学技術開発の決定的な牽引車は電気でした。この頃は、巨大な情報の高速道路であるコンピューターの伝送容量がその役割を担っています。今日、ラジオ、テレビ、新聞、インターネットなどの言論媒体を通して、たった一日で得ることのできる情報量だけでもものすごい量です。問題は、人類がこのようなあらゆる情報を十分に消化して、善の目的のために正しく活用する意志と能力をもっているかということです。
ニュースと情報がこの世に氾濫し、その過程で私たちは商業化が進んでいく趨勢を目撃しています。情報は次第に商品として売られるようになっていくのです。そして、情報のもつ倫理的、社会的、道徳的影響よりは、情報の市場性、すなわち情報がいかに多く売れるかに重点が置かれています。「情報高速道路」が及ぼす影響を正しく評価するためには、この時代の驚くべき科学技術の発展のような外形的変化を見越す見識がなければならず、また言論に影響を及ぼす様々な内的側面に注目しなければなりません。
私たちは、より本質的な立場で虚心坦懐(きょしんたんかい)に、情報化時代が人類の心と霊魂にどのようにして肯定的、あるいは否定的な影響を及ぼすのかを検討してみる必要があります。地球村時代を迎え、私たちの願う言論とはどのようなものなのかを自問しなければならないときになったのです。今日は、歴史に対する言論の責任を明確に認識しなければならない時代です。
言論は人間生活の本質と家庭、国家などの諸般の制度と世界に影響を及ぼすという面から、言論の役割について皆様と共に考えようと思います。核心的な問題は、情報の伝達を誰が掌握するかということです。現在、先端情報技術を最も活発に活用する分野としては、商業広告、政治宣伝、それから大衆文化などが挙げられます。
情報技術が飛躍的に発展したからといって、私たちがより良い人間に変化し、より健全な社会になったと言えるわけではありません。情報技術の発展には、肯定的な面がある反面、かなり否定的な面もあるのです。
親は、子女たちが勉強を疎かにし、インターネットを通して非常に非道徳的で性的に乱れた環境でチャットに熱中して夜を明かす姿を時々目撃するでしょう。大衆文化にあふれる暴力的で扇情的な娯楽物は、現実からかけ離れた世界を形成し、人をして他人の途方もない現実的な苦痛に対して鈍感にさせながら、神様の願われる本然の愛の行為までも行うことができないようにさせるのです。
二十一世紀の人類は、冷戦時代よりも一層根本的で、危険ですらある各種の懸案に直面するようになるでしょう。私たちが直面することになる問題は、東西間の対立ではなく、価値世界の葛藤です。言い換えれば、道徳と非道徳の間の世界的な戦いになるでしょう。度が過ぎた商業化は、人間の尊厳性に否定的な影響を及ぼすようになり、それによって、神様が私たちの生活の中で共にいらっしゃることができないという結果まで招くようになるのです。言論媒体は、道徳水準の高い公平な基準を強調しようと努めていますが、その過程において、価値観とは関係なしに働く利潤追求という市場論理とその力に屈服する危険性があるのです。
不幸にも今日の社会的、文化的環境は、道徳的に堕落した状態に置かれています。家庭の尊厳性が破壊され、地上のすべての国家が苦痛と絶望の沼に追いつめられており、エイズによって、すべての国家が破壊される境地に至りました。道徳的規範を認めない言論文化が、いかにして若者が自己破滅の道へと向かうのを防ぐことはできるのでしょうか。そのような言論が、いかにして麻薬犯罪、離婚の増加、家庭崩壊、エイズ、性犯罪などを防ぐ方案を提示できるのでしょうか。これに対する答えは、私が言わずとも、皆様御自身がよく御存じだと思います。
現代の通信技術は、言論の自由の範囲を広げてくれています。インターネットによって、誰もが出版できるようになりました。おかしな表現に聞こえるかもしれませんが、私たちは今日、表現の自由があまりに多く、その中に溺れてもがいているのです。したがって、表現の自由をいかに行使するかは本当に重要な問題です。
今回の会議のメーンテーマは「新千年における言論の統一された方向」です。このようなテーマに対し、皆様のなかで一部の人は異なる意見をもつかもしれません。言論の自由という概念は、明らかに中心的方向がないことを意味するからです。しかし、ここで言う「統一された方向」というのは、言論の自由を行使する量的拡大よりは、人間の尊厳性と真の家庭、信仰の価値に重点を置いた社会規範を正しく立て直すための言論の質を念頭に置かなければならないことを意味します。
個人の価値と尊厳性は、真の家庭の安定した基盤の上で一層高揚され、光り輝くようになります。家庭は、男性と女性が互いに尊重し合い、和合しながら暮らすことを学べる最高の場所です。結局、人々は、人生で最も重要な要素である真の愛を、家庭の中で完全に学ぶようになるのです。世の中に対する価値認識は、一次的に両親や兄弟姉妹から影響を受けるようになります。家庭は、愛を学ぶ最初で最高の学校です。家庭こそが、理想社会と平和世界の礎石なのです。ですから、真の家庭の価値は、言論によって保護され、尊重されなければなりません。
いくら社会が豊かで自由であり、すべての家庭にコンピューターがあって、光ファィバーによるインターネット•サービスが可能な環境を造成できていたとしても、その社会が家庭崩壊を防ぐことができないとすれば、市民に幸福をもたらす健全な社会にはなり得ないのです。
人間の尊厳性の根拠は、どこにあるのでしょうか。人類は本来、神様によって、神様の子女として創造されました。私たちが神様のことをしばしば「父」と呼ぶのはこのためです。そして、私たちの目標は、神様に似た子女として成長し、神様の神性を相続することです。さらに神様を中心とした個人は、同様に神様を中心として生活する家庭を形成するようになります。結局、全人類は、この真の家庭で、真の父母であられる神様の愛と生命と血統を受け継ぐようになるのです。
人間社会における宗教の役割は、人間と神様の関係を向上させる上で重要なものです。そのような意味で、信仰は必須的なものです。皆様がいかなる宗教を信じたとしても、その宗教が提示する皆様と神様との関係が核心となります。特に人間が信仰を通して、絶対、唯一、永遠、不変であられる神様と一つになるときに、人間の内的価値も、絶対、唯一、永遠、不変になります。ですから、信仰は、人間の尊厳性に必須不可欠な価値をもっているのです。
そのような意味で、信仰の自由、信仰生活、信仰に基づいた活動などは、理想社会を建設するための柱になるのです。このような信仰的価値観を土台とした人間の生活は、ために生きる神様の真の愛の世界へと人類を導いていくでしょう。すべての宗教が、信仰を土台として真の愛を実践するとき、世界は神様のもとの一つの兄弟姉妹として結ばれるようになるのです。
私が一九七八年に創設した「世界言論人会議」は、言論が抑圧されている地域では、言論の自由な表現の増進のために努力し、言論の自由が既に保障されている国家では、責任ある言論の自由を行使できるようにすることに寄与してきました。私は今回の会議が、今日の新しい環境において、言論の最善の行動指針を設定することに貢献することを期待します。
言論人は、人間の生で最も価値ある要素と世界平和を実現できる最善の方法に関する真理を伝達し、人類を啓蒙する、そのような勇気をしばしば見せてくれました。未来は、言論人である皆様の努力により、人類の絶対、唯一、永遠、不変の尊厳性が花咲き、私たちを世界平和へと導く真の家庭を実現する時代にならなければなりません。
そのような観点で、きょうはとても意義深い日です。世界各国の言論界の指導者である皆様は、今夜、私がお話しした内容を胸の奥深くに刻み込んでくださるようお願いします。健全な家庭と理想社会、そして平和世界の構築という使命は、私だけに与えられたものではありません。このような課業に、皆様も参加することを神様は願われています。
情報化時代に生きる皆様は、世界のどの地域にも行くことができ、世界のどの場所とも即刻的に意思疎通が可能なのです。しかし、皆様と皆様の国と世界のための神様のみ旨を成し遂げるために、皆様はニュースと情報がいかなる価値をつくり出し、世界にいかなる影響を及ぼすかということに対して責任感をもたなければなりません。さらに皆様御自身の生活は、真の価値をもつ生きた手本にならなければなりません。それさえできれば、皆様は、神様に栄光をお返しし、人類には希望と幸福をもたらすことができるでしょう。
私は今回の会議で、皆様の真摯な努力が、立派な結実を収めると期待しています。私たちは、すべての情報とニュースの伝達に必要な技術を、既に確保しています。皆様は神様と結ばれた中で、このような技術を効果的に適用できる真の人間の心情的価値と本性に関心をもってくださることをお願いします。神様の祝福が、皆様と皆様の御家庭に共にあることを祈ります。ありがとうございました。
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