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一九五〇年六月二十五日、六・二五動乱が勃発した。国連軍が結成され、連合軍が参戦した最初の戦争であった。この戦争は、民主世界と共産世界の対決の場であり、アベル型の人生観を集約した神本主義の唯心思想とカイン型の人生観を集約した無神論の唯物思想が対立した戦争であった。真のお父様は、国連軍の爆撃によって、戦争の勃発から百十二日目の十月十四日、興南監獄から解放された。国連十六ヵ国が参戦した六・二五動乱は、摂理から見れば、再臨のメシヤを神様が救出されるための聖戦であった。
1 六・二五動乱は、世界十六ヵ国の人々が血を流しながら、勝利を主張し、標榜した戦争です。そのような出来事は、神様の摂理に従ってきた人類の歴史上、初めてのことでした。一国の内乱のようですが、神様の摂理歴史の中で、このような戦争は初めてでした。それがお父様と連結されれば、天のメシヤ精神と連結されるのです。ですから、この戦争の歴史を明らかにすることで、全世界が受ける影響がいかに大きいかというのです。そのような意味で、メシヤが生まれた所が祖国です。人類の祖国になる韓国を保護し、祖国光復を成し遂げるために、六・二五動乱に多くの国を動員したのです。
2 お父様が興南の監獄にいる時、六・二五動乱が起きたので、共産党は、監獄にいるすべての囚人を、最前線の三十八度線に立てて殺害する計画を立てました。事態がますます緊迫してくるので、そこにいるすべての囚人たちの中で刑期の長い人たちは、より遠い場所に後退させ、残りの約三分の二は最前線に送り出そうとしました。人海戦術を行うために、良くも悪しくもすべて引っ張っていったのです。命令に従わない時には、すべて銃殺してしまう計画でした。
その時、八百人以上を興南から定平(チョンピョン)まで引っ張っていきました。本来、興南から元山までは汽車が通っていましたが、その時は国連軍の爆撃で線路が寸断され、十二里ほどを歩いていかなければなりませんでした。七十人余りしか残さずに、すべて連れていったのです。その時、お父様も連れていかれましたが、夜八時に出発し、夜通し歩いて夜明け頃には八里ほどの所まで行きました。昼は爆撃があるので歩くことができませんでした。汽車もまた夜の時間を利用しなければならないので、早朝四時前に到着するようにしたのです。一日では着かないので、二日かけて行く計画で、初日の夜は夜通し歩き、朝方に立ち止まりました。
ところが、中央から私たちを乗せるために下ってくる汽車に途中で事故が起き、仕方なく数日間そこに停車して留まることになったのです。そこにそのまま滞在すると、かなりの支障を来します。この囚人たちを連れていく途中で、万が一事件でも起きれば、問題が生じるような状況になったというのです。そうして、看守たちはほんの数人しかおらず、囚人たちはたくさんいるので、問題が起きるのではないかといって戻ることになりました。戻ってきてから、また三日後にその八百人以上の囚人を連れていったのですが、その時は、私は残ることになり、監獄から出てくるようになったのです。
3 興南の監獄から解放されて出てくる時、私の後ろに四人の人が付いてきました。「先生が行かれるところに付いていきます」と言ったのです。妻も子もすべて捨てて、私に付いてきました。その中に、文氏の姓をもった人が一人いました。文氏の中にカインが一人できたのです。「自分たちの故郷には帰らない」と言って、出てくる時に四人の人が平壌まで付いてきましたが、その文氏はある所に連絡を取りに行き、その間に私たちが南に下ることになったため、離れ離れになってしまいました。
彼はカインとして以北に残り、私はアベルとして以南に来たのです。私が北朝鮮に行くことになったとき、彼が死んでいなければ訪ねてくるでしょう。もしも死んでいたなら、私が彼の墓を訪ねていって、石碑を一つ建ててあげなければならないと思っています。「あなたの精誠が途絶えることがなければ、韓国と北朝鮮がこれから出会う日があるだろう」と思って、今も祈っています。私は、父や母のためには祈りませんが、彼のためには祈っているのです。
4 興南の監獄から出てくる時に、監獄から私のあとに付いてきた人の中に文氏という人がいます。この人は咸興(ハムン)にある咸鏡南道(ハムギョンナンド)の道庁で課長をしていた人ですが、名前を文正彬(ムンヂョンビン)といいました。部下が過ちを犯して捕らえられたのです。私と同じ監房にいたのですが、霊界から教えを受けて、お父様と縁をもった人です。
興南から平壌に出てくる時、私の後ろに付いてきました。彼には妻がいて、息子、娘がいました。私は監獄から出て、彼の家に立ち寄り、別れの挨拶をしてきたのですが、彼が付いてきたのです。これから平壌から南側に行こうとする時でした。金元弼の母親が教会の食口だったのですが、その母親が順安(スナン)に商売に行っていて不在でした。数日後には出発しなければならないのに、戻ってこないので、仕方なく金元弼の母親を連れてきなさいと、文正彬を送りました。
ところが、そこは、歩いていったとしても一日、二日もあれば戻ってくる距離なのに、戻ってこないのです。事態はますます緊迫してきて、中共軍に完全に包囲されそうだったので、このままでは駄目だと思い、仕方なく先に出発しました。ですから、それこそ「先生のために命を捧げる」と言って付いてきたその文氏という人は、出てくることができませんでした。金元弼の母親を連れてこようとして、南の方に出てくることができなかったのです。
5 私が監獄から出てきて平壌に行く時、付いてきた人がたくさんいました。「自分の故郷には行かない」と言ったのです。監獄から出たら、すぐに自分の故郷に帰らなければならないはずですが、帰らないというのです。彼らをみな帰し、四人だけ連れてきました。平壌に着くと、「自分の故郷に行ってきなさい」と言って、全員送りました。「何日何時まで来るように」と言いましたが、わずかにその日に間に合わずに後退したので、みなが従ってくることはできませんでした。
いつか、その人たちにまた会うでしょう。天のために忠誠を尽くし、天のために精誠を尽くす人は滅びません。天はお父様のことを愛しています。世の中の誰も知らない中で、寂しい時に天がそのように協助してくださった事実を体験しています。そのようなことが一度や二度ではありません。一度や二度ではないそのような過去を回想してみれば、その恩を忘れることはできないというのです。
6 私は、興南の監獄だけでも二年と五ヵ月間いました。そこから出てくるとき、労働しながら着ていた服を持ってきました。服の中で、作業着、ランニングシャツ、パンツ、このようなものはすべて木綿でできたものです。硫酸アンモニウム肥料工場で働いたので、木綿にそれ(硫酸アンモニウム)が付けば、木綿が溶けるのです。木綿は酸に弱いので、引っ張るとすべて破れてしまいます。ですから、長く着ていると穴が開いたり、ぼろぼろに腐食したりして、それを着ると乞食の中の乞食になります。臭いがして、どうしようもありません。服をこすると粉になってしまいます。それを捨ててはいけません。これが統一教会の歴史的な財産として宝物になるのです。
これを捨てることができないので、すべて布団の中にぎゅうぎゅうに詰め込みました。すべて布団の中に詰め込んだのです。そして、寝る時にはそれを敷いて寝ます。布団の綿を抜き取って、二年半の間着ていたぼろの包みを代わりに詰め込んだのです。監獄から出てくる時、持ち出す財産が何かあるでしょうか。興南から平壌までの十日間、それを背負ってきたのです。他の所帯道具はすべて投げ捨てて、それを持って出てきました。
そのようにして出てくる時、それをある食口に預けながら、「絹のチョゴリ、スカート、高級な絹の布団をすべて捨てたとしても、これだけは間違いなく私のところに持ってきなさい」と言ったのですが、それを先に捨てて自分たちの物だけをまとめて持ってきたのです。それで、それをなくしてしまいました。もしも今その(歴史を証する)材料があれば、私が説明をする必要はないでしょう。天下とも交換できない貴い材料です。
7 私が興南の監獄から出てくる時に、それまで着ていたそのぼろを持って出てきました。それを売ったところで一銭にもなりません。廃品回収業者にあげても、見返りに飴の半分もくれないのです。三年近い歳月を送りながら、絹のズボンとチョゴリは人にあげてしまい、その囚人服だけを着て暮らしていました。触るとぼろぼろと綿のように崩れていくそのぼろが、何のために必要だったかというのです。それは、十年、一世紀、あるいは数十世紀が過ぎたのちには、億万のお金を出しても買えない宝物になるのです。
今、エルサレムにイエス様が使っていた箸が一膳でもあるとすれば、それはたとえイギリスを渡すといっても買えず、アメリカを渡すといっても買えないでしょう。このような言葉を、今日の若者たちが聞けば笑うかもしれませんが、千金、万金よりもさらに貴いので、困難な環境を克服してまで、それを持って出てきたというのです。
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